こんにちは。
このブログでは、建築のプロが住宅のギモンをやさしく、そして具体的に解説していきます。
今日のテーマは「床下断熱のやり直し基準」。
富山・高岡の冬に特有の“底冷え”を、体感からちゃんと変えるための道筋をお伝えします。
まずひとことで言えば、床下が整うと室温の数字以上に“暖かさの印象”が変わります。
同じ暖房設定でも、足裏が冷えないだけで暮らしの満足度は別物になります。
だからこそ、やみくもに断熱材を足す前に「なぜ冷えるのか」「どこを直すのか」という根拠を持ってから手を入れることが重要です。
なぜ富山の家は「床」から寒くなるのか
日本海側の冬型気圧配置では、冷たい外気が基礎の通気口や床下のすき間から回り込み、床板のすぐ裏で風となって走ります。
この“床下の気流”に暖房は勝てません。
外周の「気流止め」(きりゅうどめ=外周部や間仕切りの足元で冷たい空気の通り道を切る処理)が弱いと、すき間を通って冷気が室内側へまで引き込まれ、リビングの真ん中でも足がひやっとすることがあります。
人の体は、数字の室温よりも“触れる面の温度”に敏感ですから、床面が18℃を下回ると寒さを強く感じ、さらに結露→カビ→ダニといった不快の連鎖も起こりやすくなります。
「やり直し」のサインはどこに出る?
床下点検口をそっと開けると、答えは意外とシンプルに見つかります。
断熱材が垂れている、欠けている、押し込まれて厚みを失っている。
配管や電線のまわりにすき間が残り、テープやパッキンが効いていない。
大引き(おおびき)や土台の取り合いで、連続した気密ラインが途切れている。
暮らしの体感にも兆候が出ます。
北側の押入れや廊下だけ床が冷たい、朝だけ足元が極端に冷える、窓際と部屋の中央で床の温度差が大きい。
床下の土がしっとりしている、基礎の内側に白っぽい筋(塩だまり)が見える、木部がかび臭い。
ここまで当てはまるなら、部分補修をつぎ足すより「やり直し」を前提にした方が近道です。
床断熱の更新か、基礎断熱への切り替えか
既存が「床断熱」(ゆかだんねつ=床の合板下に断熱材を入れて、床面で外気を隔てる方法)なら、まずは根太間(ねだま)の断熱材を“正しく入れ直す”のが現実解です。
端部を逃さないサイズ取り、たわみを防ぐ固定、そして上側からの気密シートで気流を止める。
この三点がそろうだけで、カタログ値以上に体感が上がります。
一方、今後のメンテナンス性や床下エアコンの採用まで見据えるなら「基礎断熱」(きそだんねつ=基礎の内側に断熱層を連続させ、床下全体を“室内扱い”にする方法)という選択肢があります。
基礎断熱は、配管の凍結リスクが下がり、温度ムラが小さく、点検も楽になるのが利点です。
ただし富山のような積雪・多湿地域では、土間の防湿(地面からの水蒸気を切るシート施工)、連続した気密、点検口の気密、シロアリ対策(薬剤や物理バリア)までを“前提条件”として設計することが欠かせません。
体感差を決めるのは「断熱材の厚み」より“気流止め”
断熱材の性能値(λ値・熱伝導率や熱抵抗)に目が行きがちですが、効き目を決めるのは“すき間の処理”です。
外周部の立ち上がりで冷気の通り道を切り、勝手口や玄関の下で“抜け道”を作らないこと。
配管一本ごとに貫通部をふさぎ、床下点検口にはきちんとした気密パッキンを入れること。
この地味な積み重ねが、富山の底冷えを確実に止めます。
湿気を制して、性能を長持ちさせる
湿った断熱材は働きません。
まずは地面からの水蒸気を切る「防湿シート」を敷くのが基本装備です。
“換気口は多いほど良い”という誤解も要注意で、風道の設計が悪いと冬は過冷却、夏は過乾燥を招き、逆効果になることもあります。
基礎断熱に切り替えるなら、床下は“管理する空間”になります。
温湿度センサーで通年の状態を見える化し、必要に応じて小型のサーキュレーターや除湿で安定させると、断熱材も木部も長持ちします。
費用と工期の目安、そして「同時にやると効く」箇所
根太間の断熱やり直しは、面積・床下の高さ・補修を要する箇所数で費用が変わりますが、一般的な戸建てなら数日〜一週間前後で収まることが多い印象です。
侵入経路の気密処理や床下の防湿を同時に行うと、コストに対して体感の伸びが大きくなります。
さらに、玄関ドアの断熱交換や内窓の導入を“ワンセット”で合わせると、足元の冷えが一段階下がり、暖房の消費電力も目に見えて落ちます。
“富山の冬の電気代”という現実の数値にも、ちゃんと効いてきます。
新築・大型リノベなら、ここを外さない
新築やスケルトンに近いリノベでは、UA値(ユーエーち=外皮平均熱貫流率、家の断熱力の指標)や一次エネルギー消費量の達成は大前提です。
ただ、体感を決めるのは“床の表面温度をどこまで落とさないか”。
気密はC値(シーチ=相当隙間面積)を「測って管理する」前提で設計し、基礎断熱+床下エアコンの組み合わせを検討すると、積雪地域でも“あたたかい足元”をつくりやすくなります。
また、階段や吹き抜けは、最初に“暖気の循環計画”を決めておくほどムラが出ません。
床仕上げ材の熱伝導や厚みも足裏の印象を左右しますから、サンプルを触って決めると失敗が少なくなります。
今日からできる、かんたんチェック
朝いちばん、窓際と部屋の中央で床に手を当て、温度差を感じるか確かめてみてください。
換気扇を回したとき、床のすき間で風を感じるなら、気密不足の可能性が高いサインです。
北側の収納の床が湿っぽい、靴が乾きにくい、基礎に白い筋がある――こうした“湿りの兆候”があれば、防湿と気流止めの見直しを検討する時期です。
一つでも当てはまるなら、床下の点検から始める価値があります。
まとめ(実践チャート)
今週は、床下点検口のパッキンやすき間の有無を確認しましょう。
来週は、外周部の気流止めと配管まわりの処理が必要かを、現地で一緒に洗い出します。
今月中に、床下の防湿と断熱のやり直し計画を固め、必要なら玄関ドアや内窓も“同時改善”に含めます。
断熱も外構も、いきなり大きな工事をする必要はありません。
小さな改善を一つずつ積み重ねることで、暮らしは確実に快適になります。
季節や家族の変化に合わせて整えていく、それが長く愛される住まいづくりのコツです。
アクスプランニングのご紹介
アクスプランニングは、富山・高岡の気候に合わせた断熱リフォームとリノベーションを、一件ずつ丁寧に設計しています。
家事がラクになる動線、快適な温度、片づけやすい収納を軸に、無理のない計画で進めます。
「うちも変えられる?」という段階からでも、気軽にご相談ください。